日本職業リハビリテーション学会第51回島根大会

ご挨拶

第51回日本職業リハビリテーション学会島根大会は、宍道湖、国宝松江城など風光明媚で史跡に富む島根県松江市で開催されます。松江テルサ(松江市朝日町478-18)を会場に、対面形式による開催を予定し準備を進めています。

本大会のテーマは、『職業リハビリテーションにおける「本人中心」を問い直す』です。

「本人中心」に焦点を当てたのは2つの理由からです。まず、昭和、平成を経て令和の時代に入り、勤勉実直を了とする時から、より一層「何のために働くのか」「働くことでどうなりたいのか」を一人ひとりが自問自答する時代となっているからです。それは障害を持つ方にとっても共通の問いです。この時代背景に呼応する形で、働くことの質に関する議論が深まりつつあります。就労選択支援が創設され、「本人の希望や就労能力、適性などに合った選択を支援する」「本人と協同する」などと謳われ、いかに「本人を取り組みの中心におくか」が重要視されていますが、ここにある「本人中心」の意味は曖昧なままです。二つ目の理由は、私自身が、精神医療の中で、一度と言わず人生の目標を失った当事者の方々を対象に伴走型個別就労支援IPSに取り組む中で、その実践で重視されるperson-centered approachとは何か、常に悩み答えを探し続けているからです。本人の希望や興味関心、ストレングスに寄り添い、それを尊重するとはどういうことか?共にその問いについて多くの方々と意見を交わしたいと熱望したからです。

「問い直す」という言葉には、「改めて、幅広く考える」という意味が込められています。そもそも、「本人中心」の「本人」とは何を指すのか?本人の希望、好み、意志、それとも才能や能力なのか?また、「中心」とは、誰から観た中心なのか?どういう枠組みの中の中心なのか?さらに、「本人主体」「本人との協同」「自己理解の促進」「自己決定の尊重」などとどう重なり合うのか、または、繋がりあうのか?「本人中心」について「改めて、幅広く考える」と、テーマは幾多とあるようです。ときには掴みどころのない、抽象的な議論となるかもしれません。しかし、その議論を避けて、どのような制度や評価法を設計しても、障害者が働き、人生を豊かにすることを目指す限り、結局はこの問いに支援者も当事者も帰結するのだろうと思います。実行委員会としては、「本人中心」を厳密に定義しているわけではありません。上記のすべてのテーマ、それ以外の有意義なテーマ、すべてを包含するものとして、「本人中心」について、改めて、幅広く考える機会にしたいと考えております。

近年、リカバリーという概念が国際的にも共有されてきており、それは日本でも例外ではありません。リカバリーを文字で表現することは容易ではありませんが、例えばAnthonyは、リカバリーは「病気による制限があったとしても、満たされ、希望に満ち、貢献する生活を送ること。疾患の影響を超えて、成長しながら人生における新たな意味と目標を見つけること」と述べています。就労は、社会参加を通じて有意義な活動の場を提供し、自立を促し、確かなリカバリーの足がかりを与えてくれます。職業リハビリテーションがさらに発展し、当事者のリカバリーのより確かな推進力となるために、「本人中心」に焦点を当てながら、専門家、企業、そして当事者と共に対面の議論を展開できることを楽しみにしています。

多くの皆様にとって遠方の地となるかと思いますが、「JR松江駅から徒歩1分」という、最もアクセスの良い会場を選定しました。全国から多くの皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。「歴史と文化の薫るまち 水の都・松江」にぜひお越しください。

第51回島根大会 大会長 林輝男
(社会医療法人清和会)

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